私はこの日のことを何度か反芻して、そのたび、あれは現実にあったことだろうかと不思議な気持ちに陥る。

後に、私はこの日のことを何度か反芻して、そのたび、あれは現実にあったことだろうかと不思議な気持ちに陥る。まるで、白昼夢のような記憶として、胸にしまわれた。

鍵のない夢を見る 辻村深月 仁志野町の泥棒 P.32

直木賞を受賞したショートストーリー連作。

「ナナ、ハチ、ゼロ、ナナ」も女性心理をリアルに感じさせる筆致でしたが、本作はより研ぎすまれた字句で切り出される女性たちの心の声を描く。

登場する5人はいずれも痛々しく、薄幸で、愚かしく、孤独。それゆえ作家が紡ぐリアリティは背筋を寒くする。

そこには救いはなく読むのは辛く悲しいのだけれど、作品を通じ体感すること得られるものがある良作でした。

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